Clashを家の複数端末で使う方法|LAN共有とルーター構成の選び方
まず選ぶ:PC共有・二重ルーター・ルーター上のmihomo
家のスマートフォンやPCでClashを使う方法は、大きく分けて3つあります。手元のPCでmihomoのプロキシポートをLANに公開し、各端末から接続する方法。既存ルーターの下にもう1台ルーターを置き、ネットワークを分ける方法。そして、対応するルーター自体にmihomoを導入し、ルーティングで通信を取り込む方法です。名前が似ていても、通信の流れや必要な設定は異なります。
家族のスマートフォン1台で試すなら、PC共有が最も手軽です。PCを起動しておく必要はありますが、既存のネットワーク構成を大きく変えずに動作を確認できます。家族が使う端末が増え、PCを常時起動したくない場合は、ルーター側での運用を検討します。ただし、ルーターを追加しただけでClashの通信が始まるわけではありません。プロキシ接続を受け付ける設定、または対応する透過プロキシ機能が別途必要です。
| 方式 | 通信の流れ | 向いているケース | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| PCのLANプロキシ共有 | 端末のプロキシ設定からPC上のmihomoへ接続 | 少数の端末で試す、手動設定を許容できる | PCを起動し続ける。端末側でプロキシ設定に従わないアプリは対象外 |
| 二重ルーター | 追加ルーターの配下に端末用の別ネットワークを作る | 端末を分離したい、既存LANを変更しにくい | 二重ルーターだけではプロキシ処理されない。二重NATや機器間通信の制限が生じる場合がある |
| ルーター上でmihomoを実行 | ルーターが端末の通信を受け、ルールに従って転送 | 複数端末で継続利用し、対応機能を管理できる | 対応機種、ファームウェア、性能、設定保守を事前に確認 |
「共有」の範囲も先に決めてください。端末のWi-Fi設定にHTTPプロキシを入力する方式は、その設定を使うアプリの通信をmihomoへ送ります。端末全体の通信を取り込みたい場合は、端末自身のVPN/TUN対応クライアントや、ルーターの透過的なルーティング機能など、別の仕組みが必要です。PCでTUNを有効にしても、同じWi-Fiに接続したほかの端末まで自動的に対象になるわけではありません。
PC共有の前提:ポート・LAN許可・ファイアウォール
PC上のClashをスマートフォンなどから利用するには、3つの条件をそろえます。mihomoがプロキシポートで待ち受けていること、LANからの接続を許可していること、PCのファイアウォールが必要な受信通信を許可していることです。接続する端末には、PCのLAN内IPアドレスとポートを設定します。クライアントによって項目名や設定場所が異なるため、画面に表示される値と、実際に適用中の設定を確認してください。
例として、PCのLAN内アドレスを192.168.50.10、家庭内サブネットを192.168.50.0/24、混合ポートを7890とします。これらは説明用の値です。PCのIPアドレスはWindowsならターミナルでipconfigを実行し、接続中のWi-FiまたはイーサネットアダプターのIPv4アドレスを確認します。仮想アダプターやTUNアダプターのアドレスを、スマートフォンから接続する宛先にしないでください。
mixed-port: 7890
allow-lan: true
bind-address: 192.168.50.10
mode: rule
これは設定項目の関係を示す最小例であり、サブスクリプション設定全体の代わりではありません。使用中の設定に同じ項目がある場合は、重複して追記せず、既存値を確認して編集します。GUIで管理している場合は、画面上の混合ポートやLAN接続の設定が実際のコア設定に反映されるかを確認してください。bind-addressを特定のLANアドレスにすると公開範囲を絞れますが、PCのアドレスが変わると待ち受けに失敗することがあります。ルーターのDHCPアドレス予約を使えば、PCのアドレスを固定しやすくなります。
手順:PCのプロキシをスマートフォンで試す
最初は1台だけで試し、接続できてから残りの端末に広げます。設定を同時に何か所も変えると、失敗した際に原因を追いにくくなります。作業前に、Clashで現在有効な設定名、混合ポート、システムプロキシやTUNの状態を記録しておきましょう。
- PCと接続端末を同じ家庭内ネットワークにつなぎます。スマートフォンがモバイル回線に切り替わっていないことも確認します。Wi-Fiのクライアント分離が有効だと、同じSSIDでも端末同士が通信できないことがあります。
- PCのLAN内IPアドレスと混合ポートを確認します。ここでは例として
192.168.50.10と7890を使います。PCのIPアドレスが変わった場合は、端末側の宛先も更新します。 - ClashでLAN接続を許可します。「Allow LAN」「LAN接続」などの項目を有効にし、待ち受けアドレスがループバックだけになっていないか確認します。
127.0.0.1は設定した機器自身を指すため、スマートフォンに入力してもPCには接続できません。 - ファイアウォールで受信を許可します。Windowsでは「Windows セキュリティ」→「ファイアウォールとネットワーク保護」から、信頼できるプライベートネットワークに限ってアプリまたはポートの受信を許可します。ポートを指定する場合も、実際に使用する番号に合わせ、不要になった規則は削除します。
- スマートフォンのWi-Fi設定にプロキシを入力します。接続中のネットワークの詳細設定を開き、手動プロキシとしてPCのIPアドレスとポートを指定します。例ではホストが
192.168.50.10、ポートが7890です。OSの設定名や入力欄はバージョンによって異なります。 - 通信ログで到達を確認します。スマートフォンからWebページを開き、PC上のClashの接続ログに該当リクエストが現れるか確認します。表示されなければ、IPアドレス、ポート、LAN許可、ファイアウォール、Wi-Fiの端末分離を順に見直します。
接続ログにリクエストが現れ、ルールやプロキシグループも表示されれば、端末からPCのmihomoまで通信が届いています。ページが開けない場合は、端末のプロキシ設定だけでなく、選択中のグループやルール、DNS、ノードの状態も確認します。設定画面でプロキシを指定できても、すべてのアプリがその設定に従うとは限りません。通信がログに現れないアプリは、別の方法で取り込む必要がある場合があります。
二重ルーターはネットワーク分離が目的の場合に選ぶ
二重ルーターは、既存ルーターのLANポートに2台目のルーターを接続し、その配下に別のサブネットを作る構成です。例えば、既存側が192.168.1.0/24、追加ルーター側が192.168.50.0/24なら、端末を追加ルーターのWi-Fiにつないでネットワークを分けられます。これは端末を区分するための構成であり、2台目にmihomoや対応するプロキシ機能がなければ、Clash経由の通信にはなりません。
二重ルーターにすると、追加ルーターがNATを行い、さらにその上流のルーターもNATを行うことがあります。一般的なWeb閲覧では使える場合もありますが、ゲームの着信接続、ポート転送、端末間の共有機能、ネットワーク機器の検出に影響することがあります。追加ルーターをアクセスポイントモードにすると、通常はネットワークを分離せず、既存ルーターの同じLANに端末を接続します。どちらの構成を選ぶかは、Clashを動かす機能だけでなく、端末間通信や分離の必要性も含めて決めてください。
家庭内の一部端末だけをプロキシ経由にしたいなら、PC共有または、端末ごとにプロキシを指定できる構成が分かりやすい方法です。ネットワーク全体をルーター経由で制御したい場合は、ルーター側のmihomo対応状況、ルールの適用範囲、端末ごとの除外設定を確認します。既存ルーターの管理画面に「プロキシ」という項目があっても、対応するプロトコルや対象通信は機種ごとに異なるため、機能説明を確認せずにサーバーアドレスだけ入力するのは避けましょう。
ルーター上でmihomoを動かす場合の確認点
対応するルーターにmihomoを導入すると、PCの電源を切っても処理を続けられ、複数の端末をまとめて管理しやすくなります。一方、導入には対応ファームウェア、十分なストレージやメモリー、設定のバックアップ、復旧手段が必要です。ルーターの機種名だけで利用可否を判断せず、使用するファームウェアとコアの対応状況を確認してください。非対応機器に不適切なファームウェアを書き込むと、ネットワーク機能を失うおそれがあります。
ルーターで動かす方法には、端末側からプロキシポートへ接続する方式と、ルーティングルールで通信を取り込む方式があります。前者では各端末のプロキシ設定が必要です。後者ではルーターの経路設定やファイアウォール、DNS処理などを適切に整える必要があり、設定を誤るとルーター自身の接続やノードへの通信までループすることがあります。一般的なmihomo設定の断片だけをコピーして動かそうとせず、ファームウェアが指定する設定方法と、現在のコアが対応する項目を確認します。
| 利用状況 | 検討しやすい方法 | 導入前に確認すること |
|---|---|---|
| まず1~2台で試したい | PCのLANプロキシ共有 | PCの稼働時間、端末の手動プロキシ対応、Wi-Fiの端末分離 |
| 端末をネットワークごと分けたい | 二重ルーターまたは対応するVLAN構成 | NATの段数、端末間通信、既存ルーターとの接続方式 |
| 複数端末を常時管理したい | mihomo対応ルーター | 機種・ファームウェアの対応、性能、設定の復旧方法、更新手順 |
安全に運用し、問題が起きたら段階的に切り分ける
LANに公開したプロキシポートは、家庭内の誰でも利用できる接続口になり得ます。信頼できる端末だけが接続するネットワークで使い、ゲストWi-Fiや共有住宅のネットワークに無制限で公開しないでください。ポート番号を変えるだけではアクセス制御になりません。ファイアウォールの許可範囲を絞り、不要になったらLAN共有を無効にします。プロキシポートと、API操作用のコントローラーポートは別の用途です。コントローラーをLANへ公開しないよう特に注意してください。
- 同じWi-Fiでも接続できない:PCと端末のIPアドレス、同じサブネットかどうか、ゲストネットワークやクライアント分離の設定を確認します。
- ポートへ接続できない:Clashのログ、LAN待ち受け、ポート番号、PCのファイアウォールを順に確認します。IPアドレスが以前と変わっていないかも見直してください。
- 一部のアプリだけ直接接続する:OSの手動プロキシが全アプリに適用されるとは限りません。アプリ独自のプロキシ設定や、VPN/TUNを使う方式が必要か確認します。
- PCの電源を切ると使えない:PC共有方式では正常な動作です。常時利用したい場合は、稼働を続けられる機器や対応ルーターへの移行を検討します。
- 接続先は開くが想定した経路にならない:接続ログでルールとプロキシグループを確認します。ルーターの二重化だけで通信がmihomoに渡るわけではありません。
最初はPC共有で1台の端末から通信ログを確認し、必要な範囲が分かってから構成を広げると安全です。手動プロキシで足りるなら複雑なルーティングは不要です。複数端末で常時運用する場合は、対応ルーターの要件や復旧手順まで確認してから移行してください。構成変更のたびに設定を保存し、変更は1項目ずつ行えば、接続障害が起きても原因を特定しやすくなります。